路傍(みちのべ)に私はゐる
住ひといふほどの住ひではない
ほんの小屋がけです。
往き交ひの誰彼といはず
寄りたいときにお寄り下さい
むさくるしい 狭いところぢゃありますが、
ぢきに腰を上げようと
ゆっくり逗留なさらうと それはお心まかせです。
私は語り手になりませう
ときには興にまかせて歌も歌ふ、
それもお心したいで
なにがなんでもお聴き下さいといふのではありません。
生あるかぎり
私はこの路傍を離れますまい、
そして語り手になり
歌を歌ふのです。
通りがゝりのどなたでも
氣の向いたときはお寄り下さい
歸りたければ いつまた歸られてもよろしいのです。